ここでは、全体のプロジェクトが、いかにして進行したかをお伝えします。少しでも、この絵本が作られた課程をお伝え出来れば幸いです。

1.はじまり
色々なものは色々な時と色々な場所で色々とつながっているので、どんな出来事であっても遡ろうと思えばいくらでも遡れるのですが、敢えてこのプロジェクトのはじまりを探すとすれば、去年描かせてもらった櫛引彩香さんのアルバムカヴァーかもしれません。この櫛引さんのアルバムは、aar recordsというレーベルから発売されたのですが、これにかかわっていたのが、友人のヨコデ君と今回のプロジェクトの大ボスである& recordsの畠山さんでした。 このアルバムカヴァーの依頼はヨコデ君から来たのですが、のちに畠山さんにも紹介してもらい(ヨコデくんは人をつなげるのが上手なのです)、その夜に東京に来ていたdigmeoutの谷口さんとの飲み会で色々、音楽のことなどをお話したりしました。

それから数ヶ月くらいしたころ,畠山さんから連絡をいただき、her space holidayのマーク君に絵を見せたら気に入っていたよ、とのことを教えてもらいました。Her Space Holidayは、たしか大学に行っていたくらいの頃に、Manic Expressiveというアルバムをあまりのジャケットの素晴らしさに、(radioheadのpyramid songのビデオとかもやっているshynola作)ジャケ買いして以来、名前も音楽も知っていたのですが、畠山さんに飲み会の時にいただいていた最新のアルバム、past presents the futureのアルバムがすごくポップなのに驚きました。(manic expressiveはもう少しマニアックというか、ダークだった印象があります)その後すぐに、HER SPACE HOLIDAY/AMERICAN ANALOG SET のジョイントツアーがあり、そこで実際にマーク君に紹介してもらい、つきあいが始まりました。最初は、メールでの打ち合わせから始まったのですが、何をやろうか、って話していたときにマーク君が、こんな話があるんだけれど、、って言って渡されたのがthe telescopeのストーリーでした。なんでも話自体は、かなり前からあり、(past presents the futureのアルバムのCDケースのCDを取ったところに、今回のthe telescopeのストーリーの最初の一行が書いてあります。トリビア的ですね)、これだったら今からでも始めれるけれど、、とのことでした。正直、最初読んだときはそれほどピンとこなかったのですが、何回か読んでいると、色々情景もわいてきて、絵本としてはいいかもと思い始めたので、これを題材にすることに決めました。ここまでの話はまだ2005年。まさか、そこから1年以上作り続けるとはだれも思っていなかったのです。

マーク君はかなり作業が速いです。少し連絡が無いと思うと、ほぼ完成品がいきなり送られて来たりでびっくりしたことも多々ありました。今回の絵本も、始めようか、って言ってから数日で、最初のテーマソングが送られて、まずはそのテーマソングを完成させるところから実際の作業は始まりました。デモは最初からほぼ変わっていないのですが、"we won't look back"と言う歌詞を歌うところがなんとなく浮いているような気がしていたので、それを削るか、入れるかのところでまずは議論を重ねました。このテーマソングは、絵本プロジェクトの核でもあり、のちにそれでPVを作ることも漠然と構想にはあったのでとにかくこれを完璧にすることが最初の難関でした。結局、何度も聞いていたら、その部分は気にならなくなって来たのでとっておいて、全体的な音のバランスなどを整えてもらって、テーマ曲が完成しました。で、次の日にはもうmyspaceにアップされていたので、HSHファンの方たちもリアルタイムで、テーマ曲を楽しんでもらえたと思います。 テーマ曲が完成したところで、自分がまずやったのは、全体的な雰囲気を決めるためのコンセプトアートを描くことでした。myspace上や、個展などでも公開していたので見て下さっている方もいるかもしれませんが、部屋の中で女の子と男の子がテレスコープを覗き込んでいる絵です。今回の絵本では、家の中の暗い雰囲気と外の明るい雰囲気のコントラストを出したかったので、tim burtonのような、暗いながらも美しい背景を描きたくて、このような色合いになりました。この絵はコンセプトアートとしてだけ使う予定で、絵本には入る予定はなかったのですが、見てくれた人からずいぶん良いコメントをいただいたので、絵本のクレジットページに、ちょっと改良したバージョンが掲載してあります。 この絵は、マーク君も気に入ってくれたので、だいたいの雰囲気は決定して、次の段階、絵本の構造にとりかかりました。

今回のプロジェクトにあたっては、畠山さんのほうからは、まったく縛りが無く、それこそ本のサイズからペーズ数まですべて自由にやっていいということだったので、最初は、じゃあでっかいサイズで、と言ったのですが、CD屋さんに置いてもらえないかもということで却下。サイズは、普通のデジパックと同じ大きさで、しかしいい紙を使い、絵本と同じようなしっかりしたハードカヴァーで出したいという要望をしっかり聞いて下さり、かなりものとして魅力のあるものになりました。今回の畠山さんの役割のひとつとしては、自分とmarc君が様々なところで暴走して、カヴァーは布巻きがいいよね?とか、本のサイズも目立つようにでかくしたいよね、とか、もちろんおまけのDVDつき2枚組だよね、とか予算を考えないで適当なことを言ったときに、静かながら、岩のように固い意志で、学校の先生のような感じで、それは無理ですと止めてくれることでした。畠山さんが連発した、"no more good ideas"は今回のプロジェクトの合い言葉になってしまったくらいでした。いつか宝くじでもあたったら、表紙に星の形のダイアモンドとかが埋め込まれているような予算度外視の超豪華本を作ってみたいです。 話がそれましたが、それほど自由にやらせてもらったので、まずは、マーク君の原稿を、10の章に割らせてもらって、ひとつひとつの章に、ラフなスケッチを描き始めました。他のプロジェクトともかけもちでやっていたので、これが2ヶ月くらいでまとまりだいたいの形が見えてきました。ほぼ同時期に、今回のプロジェクトにぜひ関わってほしいと思っていたふたり、PV制作の加藤さんと、絵本の壁紙を制作してもらったTAKORAさんに連絡をとらせてもらいました。加藤さんもTAKORAさんも、それまでも友達付き合いで飲みに行ったりとかして、何かいっしょに出来たらいいよね、というイラストレーターやデザイナーが良く言う言葉を言ったりしていたのですが、今回のプロジェクトで、本当に一緒のものを作れたのは自分にとって素晴らしくうれしいことのひとつでもありました。加藤さんは、PS2, GC, DSなどの数々のゲームでCGアニメーションを手がけている人で、TAKORAさんも最近ではりそな銀行のグラフィックや、jet set radio(!)の仕事や、アジア規模の人気を誇るデザイナーさんなので、マーク君ももちろんのこと、このふたりとも同じものを作れることは非常に刺激的でした。

仕事内容として、TAKORAさんのほうは、自由にやってもらって彼なりのテレスコープ的なパターン画を描いてもらい、PVのほうは、加藤さんと一緒に、絵コンテをつくるところから始めました。自分は絵コンテは描いたことがなく、かなりひどい出来だったのですが、加藤さんはニュアンスをしっかり汲み取ってくれて、それを素早く形にしてくれました。自分の適当な絵コンテのシーンが実際にCGになっていく過程はかなり興奮ものでした。絵コンテの次は、加藤さんからの要望で、PVのためのキャラクターデザインを考えることでした。この絵本の登場人物は女の子と男の子の二人だけなのですが、どうちらかというと、男の子のほうが内気な感じで、女の子のほうがひっぱていくという感じです。最初は男の子にメガネをかけさすことも考えたのですが、それによってあまりにマーク君に似てしまうと、読んでいる人があまり感情移入できなくなりそうなので、メガネはやめて、顔も、ずいぶんと違う感じにしました。加藤さんが作ってくれた人間のCGモデルの上から、テクスチャーとして、メインの女の子と男の子の前と後ろを描いていったのですが、これを先に作ったことにより、絵本の中でもそれほどキャラクターのブレがなかったので、正解でした。(普段は、あまり設定画とかを描かないために、こち亀のように最初と最後の絵柄が変わったりとかしたのです、、)。そして、その絵を元に、加藤さんが主人公2人のモデリングをしてくれたのですが、PVでは見えない細かい、口の中や目のまばたきなども作り込んであり、ただ、ただびっくりでした。今回のPVは絵本調に、なるべくCGぽくないCGを作ってほしいと加藤さんに伝えてあったのですが、様々な調整を得て、キャラクターも2Dアニメーションのようにフラットに動いていて、絵本的な雰囲気が十分に感じられるものになっていると思います。


2.デモと作り直し、デモと作り直し、デモと作り直し。
ここの時点で完成していたのが、清書した下絵の80%くらい、マーク君のほうは、テーマ曲と、3章分のナレーションのデモでした。 実は、この3章分のナレーションは不慮の事故で永遠に失われてしまう運命にあるのですが、このときはそんなことは知るはずもなく、かなりマーク君の士気も高かったと思います。この時点では、だいたい2006年の6月くらいの発売を予定していたのですが、そこから&レコード内の様々な変化に加えて、自分もマーク君も、加藤さんも、TAKORAさんもそれぞれの仕事に追われてしまい、一度このプロジェクトからは離れていました。その間に、仕事としての絵や個展やグループ展用の絵を描き続けていく内に、少しずつ絵のスタイルも変化してきました。もともと、自分の描くものにはすぐ飽きてしまい、常にちがうことをやりたいなとは思っているのですが、この時期は変化が特に激しかったです。決壊、そのときまでに描いていた絵本用の絵があまりにも古くさく見えてしまい、すべてを一から描き直すことにしました。2つめのバージョンは最初のバージョンよりもかなりポップで理解できやすくなったと思います。独りよがりの部分が少なくなったような。今回の絵は、絵本の挿絵というよりは、the telescopeというストーリーを自分なりに解釈して、自分のバージョンのストーリーとして書き直すつもりでやっていたので最初のバージョンでは、この2つめのバージョンよりもさらに抽象的だったと思います。

そして、時は2006年6月。最初に考えていた絵本の予定発売月でしたが、このときは結局1枚の絵も色塗りは初めてもいなく、マーク君の曲もデモのままでした。そうこうしている内にマーク君から、またHer Space Holidayのライブを日本でやるので来日するとの連絡が入りました。 今回のライブは彼らとしては異色のフルアコースティックのライブで、その前のライブのアンコールにやった、アコースティックバージョンの"past presents the future”の曲が一番好きだった自分からすれば、感動もののライブでした。暖炉の前で友達が集まってライブをやっているような感じかな。実はそのライブでテレスコープのテーマソングが初披露されて、一緒に行った加藤さんと喜んだのを覚えています。そのライブの前日に、当時自分が住んでいた吉祥寺で、ミーティングが行われ、TAKORAさんと加藤さんをマーク君と畠山さんに紹介し、プロジェクトが本格的に始まりました。その時にTAKORAさんが持って来てくれたデザインは、完璧で、そのときに見せてもらったデザインが、ほぼそのままの形で今回の絵本に使用されています。今、思うとTAKORAさんが一番先に仕事を終えてくれていました。早い。そのミーティングでは、自分が描いた絵コンテを元に、マーク君や加藤さんのアイデアを盛り込んでいき、PVのだいたいのストーリーが固まりました。絵本のストーリーとして、ロードムービー的に、A地点からB地点に行くという(場所だけではなくて、思いとかそういうものも含めて)あったので、それを表現しようと思い、今回のPVのような、淡々と進む映像になりました。

そこから数ヶ月の間は、また、それぞれのプロジェクトに没頭しながらも少しづつプロジェクトは進んでいきました。マーク君は、さらに3曲のデモ, golden, you have my heart, save a place for meを送ってくれて、彼としては、それで彼の今回のプロジェクトにおける役割は終わったものと思っていたみたいです。もちろん、この3曲も大変素晴らしい曲であり絵本の雰囲気を良くとらえていたのですが、ここまでふくれあがってきたプロジェクトのメインとして、4曲+ナレーションという構成は、少しさみしい感じがしたので、そこを説明してメールをしてみました。マーク君はかなりマメで、大抵の場合はメールを送るとすぐ返してくるのですが、そのときはめずらしく10日くらい返って来ませんでしたのでどうしたのかなと思いながら待っていました。すると、突然メールがきて、なんと、合計9曲の新バージョン+ナレーションが送られて来ました。なんでも、毎日16時間労働で、一気に完成させたらしいです。すごい。特にナレーションはかなり苦労したらしく、この時点でもまだ納得はいっていないようでした。実を言うと、今回収録されているナレーションは一番最初のデモとは全然ちがうものが収録されています。最初のバージョンは最終バージョンに比べてかなりバックグラウンドのオーケストラ的音楽の比率が大きく、ミュージカルのような雰囲気の楽しいものでした。自分はこのバージョンもかなり気に入っていたのですが、マーク君自身は、ナレーションは音楽よりも、朗読に力を入れたいとのことで、あまり好きではないようでした。仮にそのミュージカルのようなバージョンをバージョン1とします。そして、このときに9曲の新曲と共に送られて来たのが、バージョン2だったのですが、これは真逆で、まったく音楽が無く、8分以上の朗読をただ、淡々とマーク君がこなしているものでした。彼も朗読を録音するという行為は初めてらしく、相当何度も、何度もトライしていたみたいです。もちろん、この朗読だけのものを収録してもよかったのですが、自分としては、その前の楽しげな、音楽と朗読の合体という、あまり絵本の世界でも前例のなかっただろうものが好きだったので、これもいいけれど、朗読だけだったらだれでもできても音楽+朗読マーク君にしかできないんだけれど、、と熱血な学校の先生のように熱心に伝えました。すると、かなりびっくりするような答えが返って来ました。バージョン1の音源はもう無いというのです。

どうも、朗読の録音で行き詰まっていたときに、曲を作っては、消して、作っては消してとしていたらしいのですが、かわいそうなバージョン1の音源もその中に含まれていて、ハードディスクの闇の部分に送られてしまったらしいのです。(アクシデントだったんだ、とのことですが、、、)結局お互い残っているのは、サンプルとしてメールで送ってもらった、mp3圧縮してあるものだけなので、マーク君は決心して新たなるバージョンを作ることにしてくれました。3番目のバージョンであり、今回のCDにもおさめられているバージョンは、バージョン2の朗読に新たに音楽をかぶせたものなのですが、一番最初のやつよりも、ミニマルでスッキリしていて、何度聞いても飽きない素晴らしいものに仕上がっていると思います。このバージョンが優れているのは、もちろん集中して聞いて、朗読としてストーリーを楽しむことも出来るのですが、朗読の前の9曲からすーっとつながっている感じで、音楽として聞いたり、BGMとして聞き流すこともできるのです。悪い意味ではなくです。なので、この絵本が発売され、少し時間がたってみなさんが絵本になじんでくれた頃に、絵や曲のアウトテイク、そしてこの以前のバージョンの朗読を紹介できたらと思っています。もちろん、あまりにへぼい、初期の下絵とかは、こっそり隠しておきますが。


3. サンフランシスコと東京
この6月から8月は、自分にとってもかなり忙しく、シアトルとサンフランシスコでの個展のために新作を描きためて、シアトルでのオープニングに出席するために、奥さんのりかこと、友達のcartonboxといっしょに現地まで行ったりしていて、またまたこのプロジェクトからは少し疎遠になっていました。もともと、複数のことを同時にこなすのは得意ではないので、どうしても、ひとつのことに集中すると、もうひとつのことは頭から出て行ってしまうのです。悲しいながら。サンフランシスコの個展は8月の終わりに行われたのですが(ひまで仕方ない方は、8月くらいの日記を読んでもらえば、そのときの様子がわかると思います)、準備もあるので、1週間ほどサンフランシスコに滞在していて、そのときに近くに住んでいたマーク君と会い、絵本の詳細や、次回作の構想などを話していました。今回のテレスコープにあたっては、当初は日本で発売した後に、インターナショナルバージョンとして、海外でも発売することも考えていたのですが、マーク君としては、今回は本当に良くしてくれた日本のファンの方へのプレゼントとしたいとのことで、日本だけで発売することにしました。そして、これから数十年たって、自分達が全集をだせるくらいになったときに、初めてその全集にテレスコープも再収録でもしようか、というようなことを話していました。それだけ思いのつまっている作品なので、どこかに引っ越しするときも、結婚するときも、離婚するときも、お墓にはいるときも、つねにいっしょに持って行ってもらえればうれしいです。このサンフランシスコ個展の時に一緒に遊んだり、飲んだりしたせいで、もう少しマーク君の考えもわかり、テレスコープという話への理解も深まりました。しかし、ここがまた悪い癖で、ちがう側面からも話が見えてしまったせいで、数ヶ月前に描き直した絵も、どこか、ちがうような気がして来たので、日本に帰って来た9月からまた絵を描き直すことにしました。
9月の時点では、12月に発売することはほぼ決まっていたので、PVを含めたすべての締め切りは遅くて11月の頭ということになりました。そして、9月のおわりには、her space holidayのツアーが行われるので、またマーク君は来日するとのことでした。今回のツアーはYMOの高橋幸宏さんのアルバムにマーク君が参加している縁で、彼のツアーにher space holidayのセットを行うというものでした。昭和女子大学の人見記念講堂で行われたライブを見に行ったのですが、ずいぶん大きい会場だったのにおどろきました。しかし、いつものとおり、3人のメンバーは、淡々としかしかなり激しいライブを行っていたのはすごいなあと思いながら見ていました。実は、この時点で、他の絵の線画はすべて描き直し、完成していたのですが、肝心のジャケット用の絵を描いていなかったので、どうせなら日本にいるときに見せて話し合いたいと思い、それからライブ前の1週間、ほぼ徹夜でジャケット絵を完成させました。カヴァーは一番大切なものなので、ギリギリまで自分を追い込めないと、描けなかったのです(基本的になまけものなのです)。そして、それは無事に完成して、その絵がそのまま今回のジャケットになっています。今回の来日中には、グレッグサリバン先生(なぜか、りかこがサリバン先生といつも呼びたがる)によるテレスコープのマスタリング作業も行われ、それをみんなで見に行ったりしていました。サリバン先生が提示してくれる2種類の音、AとBのどっちがいい?と聞かれたりしましたが、正直どっちも同じに聞こえたので、なんとも言えませんでした。マーク君以外はみんな頭の上に?マークが浮かんでいたように思います。このツアー最後のher space holidayのライブは、滞在中に募ったであろう色々な鬱憤をすべて吹き飛ばすような激しく、でも美しいライブでした。最後に楽器を叩き割るんじゃないかと思った。ちょっと期待しました。そのツアーも無事に終えて、マーク君は帰っていき、自分達は、またバラバラにテレスコープへと戻って行きました。


4.終わり
10月の頭までには、ほぼすべての絵の線画、色塗り共に終えたので、加藤さんといっしょにPV作りを急ピッチで進めることにしました。10月には、加藤さんと週1で、うちに集まり、ひたすら作業を進めていき、10月の終わりには加藤さんがしっかりと完成させてくれました。今回のPVにおける共同作業は、元の絵コンテ以外は、ほとんど加藤さんが主導ですすめてくれて、自分は加藤さんに言われた必要なパーツ(主に木や花)を描いて行って、その2Dで描いた木や花を加藤さんが3Dの板に貼付けていきました。今回の加藤さんの作ってくれたアニメーションには数々驚くことがあったのですが、中でも計算を用いて、自然にスカートがなびいたりするのにはびっくりしました。ラップトップコンピューターで、ひとりでそのようなことまで出来てしまう、現在は、ちょっと昔からみたら、すごい未来なのかもしれません。
加藤さんが、PVを完成させてくれている間、すべての絵がおわってほっとしてしまった拍子に、かなりひどい風邪にかかってしまい久しぶりにぶったおれました。楽しみにしていた友達との晩餐会とかもすっぽかさなくてはならないほどで、体内の70%は水といいますが、それが60%くらいになりそうなくらい、それはもう、体内の様々なところから水分を吹き出しながら寝ていました。。1週間くらいたって少しましになったところで、絵本のデザイン作業に入りました。自分がやらせてもらっているCDジャケットやその他の仕事でも、ほとんどの場合は自分でデザイン作業までやっているのですが、それもいいことと悪いことがあって、自分の思い通りのものができるのはいいことなのですが、それ以上のものには絶対にならないのは悪いところです。今回は、タイトルに使うファントが全然決まらず、色々ネットで探していたのですが、結局自分が好きなburo destruct のサイトで、BD Discountというフォントを購入して使いました。かなり色々なところで使われているような気もするのですが、シンプルですてきなフォントです。

自分がデザイン作業に追われているときに、日本語訳をどうするかということで、畠山さんと少し話したのですが、今回は絵本ということもあり、普段いっしょに絵本を作っているうちの奥さん、りかこにやってもらうことにしました。しかし、絵本はいつも書いていても、翻訳作業というのは初めてだったのでかなり最初は苦戦していて、彼女のスタイルは全然でていなかったり、妙に固かったりして、面白くない文章が量産されたのですが、最終的には、かなり意訳ではありますが、マーク君の伝えたいであろうことは伝わっていながら、お話っぽい訳でができたと思います。今回のプロジェクトの面白いところは、まずストーリーがあって、それを補完するために挿絵があるという従来の絵本とは違って、ストーリーがあって、それを違う解釈で描いた絵があって、音楽があって、壁紙があって、映像があって、訳があるところです。つまりひとつのストーリーを様々な視点から映し出したものがパッケージされているのが今回の作品なのです。厳密に言うと、コラボレーションというよりは、同じテーマにそった競作という感じでしょうか。

そうこうして、11月の始めには、入稿作業も終わり、あとは完成を待つのみとなりました。まだ自分も完成品を見ていないので、楽しみにしていただいているみなさんと同じくらいワクワクしています。そして、12月8日の発売日には、自分達もこっそりと渋谷あたりのCD屋さんに行って、物陰からテレスコープを見守っていると思います。

この絵本を気に入ってもらえることを、願って。

北沢平祐 or pcp

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